留学生が日本の大学等を卒業後も継続して起業活動を行うためのあらたな制度
留学生が日本の大学等を卒業後も継続して起業活動を行うためのあらたな制度についてご説明しています。
留学生が日本の大学等を卒業し、起業活動を行うためのあらたな制度
留学生が日本の大学等を卒業後、起業活動をより円滑にできるようあらたな制度が新設されました。
この制度は2020年年7月17日に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生基本方針2020」および「成長戦略フォローアップ」に基づき、2020年11月20に施行されています。
大学等を卒業後日本で継続して起業活動を行う場合、従来の起業準備のための「特定活動(起業準備)ビザ」は卒業後6か月間と短い期間しか認められませんでした。しかし、あらたな制度が適用される留学生については、「特定活動(卒業後起業活動)ビザ」を付与して大学卒業後も最長2年間、起業活動ができるようになりました。(以下「本制度」とします)
なお、本制度を利用する方は、「留学ビザ」から「特定活動(卒業後起業活動)ビザ」への変更が必要になります。
本制度を利用できる方
本制度を利用して「特定活動(卒業後起業活動)ビザ」を取得できるのは、次の要件を満たす方だけとなります。すべての留学生が利用できるわけではありませんのでご注意ください。
■本制度を申請できる方
本制度を申請できるのは次の方です。
〇指定された大学の卒業生 〇「外国人起業活動促進事業」または「国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業」を利用して日本で起業活動をしていた方 |
■指定された大学とは
指定された大学とは、優秀な留学生の受入れに意欲的に取り組んでいるとされる次の大学です。
〇「留学生就職促進プログラム」の採択校または参画校 〇「スーパーグローバル大学創成支援事業」の採択校 |
具体的には次の大学になります。
〇「留学生就職促進プログラム」の採択校 |
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北海道大学、東北大学、山形大学、群馬大学、東洋大学、横浜国立大学、金沢大学、静岡大学、名古屋大学、関西大学、愛媛大学、熊本大学 |
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〇「留学生就職促進プログラム」の参画校 | ||
北海道科学大学、宮城学院女子大学、東北工業大学、東北学院大学、東北公益文科大学、群馬県立女子大学、高崎経済大学、前橋工科大学、共愛学園前橋国際大学、関東学園大学、上武大学、高崎商科大学、高崎健康福祉大学、群馬工業高等専門学校、島根大学、金沢星稜大学、横浜市立大学、信州大学、常葉大学、静岡理工科大学、静岡英和学院大学、沼津工業高等専門学校、静岡県立大学、岐阜大学、名古屋工業大学、名城大学、南山大学、大阪大学、大阪市立大学、大阪府立大学 |
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〇「スーパーグローバル大学創成支援事業」の採択校 | ||
北海道大学、東北大学、国際教養大学、会津大学、筑波大学、東京大学、東京医科歯科大学、東京工業大学、慶應義塾大学、早稲田大学、千葉大学、東京外国語大学、東京芸術大学、国際基督教大学、芝浦工業大学、上智大学、東洋大学、法政大学、明治大学、立教大学、創価大学、名古屋大学、金沢大学、長岡技術科学大学、豊橋技術科学大学、国際大学、京都大学、大阪大学、京都工芸繊維大学、奈良先端科学技術大学院大学、立命館大学、関西学院大学、広島大学、岡山大学、九州大学、熊本大学、立命館アジア太平洋大学 |
■「外国人起業活動促進事業」または「国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業」を利用して日本で起業活動をしていた方とは
「外国人起業活動促進事業」または「国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業」を利用して日本で起業活動をしていた方とは、日本の大学等(大学,大学院,短期大学,高等専門学校または専修学校の専門課程(専門士))を卒業後に、引き続き「外国人起業活動促進事業」または「国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業」を活用して日本で起業活動をしていたものの、所定の期間内に起業に至らなかった外国人をいいます。
「外国人起業活動促進事業」または「国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業」で起業活動をするも起業できなかった場合でも、その後本制度に移行した場合は、以前に利用していた制度と合わせて最長2年間の在留が認められます。
例えば「外国人起業活動促進事業」で1年間起業活動をするも起業に至らなかった場合、本制度を活用してあと1年間起業活動をすることができるのです。
外国人起業活動促進事業について
外国人起業活動促進事業とは、日本の産業の国際競争力を強化し、国際的な経済活動の拠点を形成することを目的として、外国人が日本で起業しやすくするための制度です。
この事業を行うためには、まず外国人起業家を支援する意欲のある地方自治体が「外国人起業活動管理支援計画」を策定し、経済産業省から認定されなければなりません。
認定された地方自治体は、策定した計画に基づき、外国人起業家の起業活動の実施状況の確認、相談体制の構築等を行い、外国人起業家の管理・支援を行います。
この制度に基づき起業活動する外国人起業家は、「特定活動ビザ」が付与され、最長で1年間、起業準備活動のために日本に在留することが可能となります。
〇対象となる地方自治体 | |
北海道、茨城県、愛知県、岐阜県、三重県、京都府、大分県、大阪市、神戸市、福岡市 |
国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業
外国人が日本で創業する場合、通常「経営・管理ビザ」の取得が必要です。
しかし、「経営・管理ビザ」の取得はハードルが高く、500万円以上の出資または2人以上の常勤の従業員の雇用、および事業所の確保等が求められます。そのため日本での起業を希望していたもののこれらの条件を満たすことができず、起業をあきらめてしまう方もいらっしゃいます。
このような問題点を解消し、意欲と能力ある留学生の起業を促進しようとしたのが「国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業」です。この制度はもともと海外に住んでいる外国人向けの制度でしたが、留学生が大学等を卒業後も適用できるよう、対象者の拡大がなされています。
この制度で「外国人創業活動促進事業」を行う地方自治体内での起業を考えている留学生は、大学を卒業後に帰国することなく、また500万円の出資や事業所確保等の条件は猶予され、「経営・管理ビザ」を取得することができるようになります。
出資額や事業所の確保は外国人起業者が「経営・管理ビザ」を取得するための最大の課題でした。
今までは、起業の準備が完了しても、ビザが不許可となり起業がとん挫する場合がありました。起業がとん挫すると起業準備のために費やした経費が無駄になってしまうため、ビザの不許可は起業家にとっては大きなリスクだったのです。
しかし、出資額や事業所の確保の条件が猶予されると「経営・管理ビザ」取得のハードルが低くんなり、起業時のビザ取得のリスクが大きく減少します。また、猶予された条件は「経営・管理ビザ」の在留期間中に満たせばいいので時間的な余裕が生まれることになります。
とは言っても、条件が不要となったわけではありませんので、これらの条件は「経営・管理ビザ」の更新時までに満たさなければなりません。
〇外国人創業活動促進事業を行う地方自治体 | |
仙台市、東京都、神奈川県、新潟市、愛知県、広島県、今治市、福岡市、北九州市 |
本制度を利用するための要件
本制度を利用するための要件は、指定された大学等を卒業後直ちに本制度を利用する場合と「外国人起業活動促進事業」または「国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業」の利用後に本制度を利用する場合の二つがあります。
■指定された大学等を卒業後直ちに本制度を利用する場合
指定された大学等を卒業後直ちに本制度を利用する場合の要件は次のとおりです。
①大学等を卒業または修了していること。 ②大学等に在学中から起業活動を行っていたこと。 ③大学等が、申請人(=卒業後起業活動を行う者)の起業活動について推薦すること。 ④大学等が、申請人の起業活動について支援をすること。 ⑤申請人が起業活動の状況を大学等に報告すること。 ⑥大学等が申請人の起業活動の継続が困難になった場合等に帰国指導・支援を行うこと。 |
※要件の②~⑥は、大学等から提出された誓約書(様式1)で判断されます。
■「外国人起業活動促進事業」または「国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業」の利用後に本制度を利用する場合
「外国人起業活動促進事業」または「国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業」の利用後に本制度を利用する場合の要件は次のとおりです。
①日本の大学等(大学、大学院、短期大学、高等専門学校または専修学校の専門課程(専門士))を卒業または修了したこと。 ②日本の大学等を卒業または修了後に、引き続き「外国人起業活動促進事業」または「国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業」をもって日本に在留した者であること。 ③「外国人起業活動促進事業」または「国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業」を活用したものの起業に至らなかった場合でも、その後引き続き日本に在留して起業活動を継続しようとする者であること。 ④本制度への移行に際して、「外国人起業活動促進事業」における「外国人起業活動促進団体(地方自治体)」または「国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業」における「関係地方自治体が上記③の起業に至らなかった理由について合理的な説明を行い、かつ、今後起業を行うことの確実性が高いことの評価を行うこと。 ⑤上記④の地方自治体または卒業した大学等が、申請人の起業活動について推薦すること。 ⑥上記④の地方自治体または卒業した大学等が、申請人の起業活動について支援をすること。 ⑦申請人が起業活動の状況を上記④の地方自治体または卒業した大学等に報告すること。 ⑧上記④の地方自治体または卒業した大学等が、申請人の起業活動の継続が困難になった場合等に帰国指導・支援を行うこと。 |
※要件の③~④は、上記④の地方自治体から提出された評価書(様式2)で判断されます。
※要件の⑤~⑧は、上記④の地方公自治体または卒業した大学等から提出された誓約書(様式3)で判断されます。
在留資格・在留期間、その他の留意点
上記要件を満たすことを前提として、「特定活動(卒業後起業活動)ビザ」による最長2年間の日本在留が認められます。
■本制度利用時の留意点
本制度により認められる在留期間中は最長2年間です。この2年間で起業活動を完了させなければなりません。
また起業活動が終了した場合、「特定活動(卒業後起業活動)ビザ」から、「経営・管理ビザ」への変更が必要になります。
■本制度の適用を受ける外国人の配偶者やお子さまが引き続き日本での生活を希望する場合
本制度の適用を受ける外国人の扶養を受ける配偶者やお子さまが、引き続き日本での生活を希望するときは、「家族滞在ビザ」から「特定活動」への変更が必要です。
■起業活動の傍ら仕事ができるか
本制度は起業活動をすることを条件に認められるビザです。そのため他に収入を得る活動をすることはできません。
ただし、「資格外活動許可」を得ることにより、1週28時間以内のアルバイト等は行うことができます。