帰化の要件
「帰化」の要件についてご説明しています。
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普通帰化の要件
まず、一般的な帰化である「普通帰化」をするために必要な外国人の要件です。「普通帰化」の要件は7つあります。
なお、ここでいう「一般的な」とは、特別永住者および日本人とご結婚された「日本人の配偶者等」ではない外国人ということです。
つまり、日本生まれではなく外国から来日し、独身か、日本人以外の外国人とご結婚された方です。特別永住者や日本人とご結婚された外国人は「簡易帰化」の対象になります。
要件1 住居要件
「帰化」の申請の要件の一つ目は「住居要件」です。「住居要件」とは何年間日本に住所を有しているかということです。また「住居要件」では、日本で仕事をしていた期間についても問われます。
引き続き5年以上日本に住所を有すること
「引き続き」日本での生活が5年以上続いている必要があります。「引き続き」とありますので、日本を出国すると「引き続き」とは認められなくなります。
しかし、1日でも日本を出国して離れるとダメというわけではなく、日本を離れていいる期間が3か月程度であれば「引き続き」として認められます。ただし、1回の出国が3か月未満でも、何回も日本を離れ、その期間が1年間で150日以上になった場合は「引き続き」が否定される可能性が高くなります。
会社の長期出張命令など日本を離れなければならないような、やむを得ない理由があったとしても、日本を離れた理由は考慮されませんので要件を満たさないとして「帰化」は認められなくなります。
例えば4年間日本で生活した後、会社の命令で1年間海外に長期間出張し、その後日本に戻り2年間日本で生活した場合、日本での居住は最後の2年間しか認められません。そのため「帰化」の申請をするためにはあと3年間が必要になります。
引き続き5年以上の日本での居住期間中、3年以上「就労」ビザの在留資格を取得して就労していること。
引き続き5年以上の日本での居住期間中、「就労ビザ」を取得して3年以上仕事をしていることが必要です。なお、正社員だけでなく、「就労ビザ」を取得していれば派遣社員や契約社員として働いていても問題はありません。
ただし、ご注意いただきたいのが留学生の方です。留学期間中に「資格外活動」の許可を得て行ったアルバイトは仕事をしていた期間として認められません。留学生の方は、卒業して日本で就職し仕事をしていた期間が3年以上必要になります。
外国人が10年以上日本に居住している場合の特例
10年以上日本で生活している外国人は、就労経験は3年なくても「就労ビザ」を取得して仕事をしている期間が1年以上あれば「帰化」の申請が可能になります。
要件2 能力要件
二つ目の要件は「帰化」の申請を単独で行える年齢を定めています。
年齢が20歳以上であり本国法によって行為能力を有すること
日本では成年年齢として20歳と定めています。20歳未満の未成年者は親の同意なく契約などができません。「帰化」ができる年齢も成年年齢である20歳と定めています。
(2022年4月から日本人の成年年齢が18歳に引き下げられますので、能力要件も18歳に引き下げられます。)
この要件にはもう一つ注意すべきことがあり、「帰化」を申請する外国人が母国で成年として認められていることが必要なのです。
成年になる年齢は各国とも違いがあり、中国は18歳、韓国は19歳としています。また、成年年齢を21歳としている国もあります。
「帰化」を申請するには20歳以上でなければできませんので、中国や韓国の方が「帰化」の申請をするには20歳でなければなりませんし、成年年齢が21歳の国では、母国で成年として認められる21歳にならなければ「帰化」の申請はできないということです。
例外
未成年者は単独で「帰化」ができないとご説明しましたが、未成年者でもご両親とともに「帰化」する場合は「帰化」は可能になります。
要件3 素行要件
三つ目の要件が「素行要件」です。「素行要件」とは日本で真面目に生活をしているかどうかということです。つまり税金や年金保険料をきちんと支払っているか、交通違反などをしていないかなどが 審査の対象になります。
税金などきちんと支払っていること
1.住民税の支払い
「帰化」のためには住民税をきちんと支払っていることが必要です。
住民税の支払は「特別徴収」と「普通徴収」があります。「特別徴収」とはサラリーマンで住民税が給与から引き去りされている方です。会社が住民税を給与から差し引き支払いますので住民税の支払いについては問題になることはありません。
しかし、「普通徴収」として住民税を銀行や郵便局、コンビニなどで住民税を支払っている方は注意が必要です。支払漏れを起こさないということです。万一、支払漏れをしていた場合は、「帰化」申請前に住民税を完納するようにしてください。
なお、ご結婚されている方は、配偶者の住民税の支払い状況も審査対象になります。申請者本人が住民税をきちんと支払っていても、配偶者が未納の場合は「帰化」の審査は厳しくなります。
また、経営者の方は、個人の住民税の他、会社の税金(法人税や個人事業税ど)の支払い状況も審査対象になります。
2.扶養について
住民税に関連して扶養が問題になることがあります。ときどきご本人の税金対策として扶養家族をごまかす方がいらっしゃるのです。
例えば、「帰化」申請が配偶者がいる場合で、その配偶者に一定の収入があり本来配偶者控除の対象ではないにもかかわらず配偶者控除を行っている場合です。
また、税法上の要件を満たしていないにもかかわらず、本国の両親や祖父母、兄弟姉妹を扶養対象にしている場合です。簡単に申し上げますと本国の親族に所得があり生活が成り立っているにもかかわらず扶養対象にしている場合です。
このような対応は法務省に提出する書類で発覚しますし、発覚すると「帰化」の申請は認められなくなります。
万一、対象外の親族等を扶養にしている場合は、修正申告をしてきちんと納税することが必要です。
3.年金保険料の支払い
住民税同様、年金の保険料の支払い状況も「帰化」申請の審査対象になります。年金とは会社員であれば厚生年金、自営業者であれば国民年金です。
サラリーマンであれば厚生年金の保険料は給与から引き去りされますので問題はありません。しかし、サラリーマンでも会社が厚生年金保険料を給与引き去りしていない場合、および個人の方や自営業者の方は国民年金保険料の支払いをしなければなりません。
国民年金保険料については支払っていない外国人も多いと思われますが、年金保険料の支払いは「帰化」の重要な要件になりますので、未納がある場合はきちんと支払うことが必要です。
4.交通違反を犯していないこと
交通違反は過去5年間の違反経歴が審査されます。軽微な違反(駐車禁止、携帯電話使用等)の場合は5年間で5回以内であれば特に問題はないと思われますが、5年間で5回以上あると「帰化」の申請は厳しくなります。
なお、飲酒運転等重大な違反の場合は、違反後相当期間を経過しなければ「帰化」は認められません。
5.犯罪歴
過去に犯した犯罪については、犯罪内容や刑罰の種類などの内容に応じて審査されることになります。前科があるから「帰化」が不許可になるとは言い切れませんが、不許可の可能性は高くなります。
要件4 生計要件
四つ目の要件は「生計要件」です。「生計要件」とは簡単に言うと生計は成り立っているかということです。つまり家族全員が生活するための収入を得ているかということが審査されます。
毎月の収入で生計が成り立っているかが審査されます
生計が成り立つ収入とはどれ位の額かといいますと、月額最低18万円程度と考えられます。なお、サラリーマンだけではなくこの金額は会社経営者も同様で、役員報酬は月額18万円程度にすることが必要になります。会社経営者は自分の給料は安くても構わないとおっしゃる方もいらっしゃいますが、最低でも18万円程度の役員報酬がなければ「帰化」は認められないと考えておいてください。
また、契約社員や派遣社員の方でも収入がきちんとあれば問題はありません。しかし、失業者は難しくなります。失業中の方は就職後「帰化」申請するようにした方がいいでしょう。
なお、配偶者に養われている場合は配偶者の収入を、親族から仕送りがある場合はその状況を加えて総合的に判断されます。
よく「貯金がある」という方がいらっしゃいますが、「帰化」では「貯蓄額」よりも「毎月の安定した収入」について審査されます。
持ち家等の有無
自宅が、持ち家か賃貸かは「帰化」申請において特に問題はありません、
住宅ローン、自動車ローン、カードローンなどの借金の有無
ローンなどの借金があっても、返済を滞りなく行っていれば問題はありません。
自己破産経験者
自己破産をしてから7年以上経っていれば問題はありませんが、7年未満の場合は「帰化」は認められません。
要件5 喪失要件
五つ目の要件は「喪失要件」です。「喪失要件」とは「帰化」後日本の国籍を得る代わりに母国の国籍を失うことが要件ということです。
「帰化」後、母国の国籍を失うことが要件となります。
日本は二重国籍を認めていないため、帰化後は母国の国籍を失うことになります。
母国の国籍を離脱できない場合
国籍を離脱するための要件がある国があります。例えば兵役義務を終わらなければ国籍を離脱でとしているような国です。
そのような場合は、母国の国籍を離脱するための要件を確認することが必要です。
要件6 思想要件
6つ目が「思想要件」です。「思想要件」とは、日本を破壊するような危険思想を持っていないということです。テロリスト集団に属している場合や暴力団構成員などが該当します。
要件7 日本語能力要件
最後の要件が「日本語能力要件」です。「日本語能力要件」とは日本語ができるかどうかということです。
日本語の能力
基本的な日本語の能力(読む、書く、話す)が必要です。日本の小学生の3~4年生レベルの日本語能力があれば問題はありません。
法務省担当官との面接
「帰化」の申請の際、法務省の担当官との相談や面談の際日本語能力も見られます。この面接の際、日本語能力が足りないと思われた場合、日本語テストを課される場合もあります。
「普通帰化」申請に関する取扱い
ご結婚されている場合の単独帰化
外国人同士でご結婚されていても、ご夫婦のお二人が同時に「帰化」しなければならないということはありません。どちらかが単独で「帰化」することができます。
お子さまがいらっしゃる場合も同様で、父親だけが「帰化」をして、奥さまやお子さまが「帰化」をしないことも可能です。
ご夫婦がふたりとも「帰化」申請する場合
ご夫婦が同時に「帰化」申請する場合、ご夫婦のうち片方の方が「帰化」要件を満たしていれば、もう一方の方が「帰化」要件を満たしていなくても、同時に「帰化」を申請した場合はお二人とも許可になる可能性は高くなります。
片方の方の「帰化」が許可されますとその配偶者は「日本人の配偶者等」となります。そのため、「日本人の配偶者等」の「帰化」要件(簡易要件)が満たされれば許可されることになるのです。
「簡易帰化」の要件
次に「簡易帰化」についてご説明します。「簡易帰化」の対象者は「普通帰化」の要件が緩和されます。
「簡易帰化」について
「簡易帰化」とは、「日本人の配偶者等」や「特別永住者(在日韓国人など)」が「帰化」をする場合です。
全部で9つのケースがあり、一部要件が緩和されます。
ケース | 具体的事例 |
① 日本国民であった者の子(養子を除く)で引き続き3年以上日本に住所、居所を有する者 |
日本人家族の全員が海外の国籍を取得した後、子が日本国籍を取得した場合です。この場合、子は日本人であった者の子となります。 |
②日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住 所・居所を有し、またはその父か母(養父母は 除く)が日本で生まれた者 |
日本で生まれた在日韓国人、朝鮮人の方などです。 |
③引き続き10年以上日本に居所を有する者 |
日本に10年以上住んでいる外国人です。多くは在日韓国人、朝鮮人の方などが該当します。 |
④日本国民の配偶者である外国人の方で引き続き3年以上日本に住所・居所を有し、かつ現に日本に住所を有する者 |
外国人が日本に3年以上住み、その後日本人と結婚した場合です。 |
⑤日本国民の配偶者で婚姻の日から3年を経過し、かつ引き続き1年以上日本に住所を有する者 |
海外で結婚生活をしていた日本人の配偶者で、結婚生活が3年を超え、来日して1年以上日本に住んでいる場合です。 |
⑥日本国民の子(養子を除く)で日本に住所を有する者 |
両親が日本国籍を取得し、その後子供が日本国籍を取得する場合と、日本人の子として生まれたものの、日本国籍を選ばなかった方が後に日本国籍を取得する場合です。 |
⑦日本国民の養子で、引き続き1年以上日本に住所を有し、かつ養子縁組の時本国法で未成年であった者 |
未成年の時に親の再婚などにより連れ子として来日した来た外国人で、来日時に義理の父(母)と養子縁組をした方です。 |
⑧日本の国籍を失った方(日本に「帰化」した後、日本の国籍を失った方は除きます。)で、日本に住所を有する者 |
外国籍になった日本人が再度日本国籍を取得する場合です。 |
⑨日本で生まれ、かつ出生の時から国籍を有しない者で、引き続き3年以上日本に住所を有する者 |
日本で生まれるも国籍がない方です。出生地主義国の外国人の両親が日本で子を生むとその子は無国籍になります。 |
要件の緩和
①、②、③の要件を満たす場合
5年間の住居要件が緩和されますので、その他の要件(能力要件、素行要件、計要件、喪失要件、思想要件)を満たせば「帰化」の申請は可能です。
④、⑤の要件を満たす場合
住居要件と能力要件が緩和されますので、引き続き5年以上日本に住んでいなくても「帰化」の申請は可能ですし、20歳未満の方でも素行要件、生計要件、喪失要件、思想要件を満たしていれば「帰化」の申請は可能になります。
⑥、⑦、⑧、⑨の要件を満たす場合
住居要件、能力要件、生計要件が緩和されます。
特別永住者(在日韓国人・朝鮮人の方など)
必要書類のうち「帰化」の動機書の作成が免除されます。