就労資格証明書~外国人が安心して転職するために~
外国人が安心して転職し、会社も安心して転職してきた外国人を雇うことができる、「就労資格証明書」についてご説明しています。
就労資格証明書~外国人が安心して転職するために~
ここでは、日本で働く外国人が、安心して転職し、会社も安心して転職してきた外国人を雇うことができる、「就労資格証明書」についてご説明します。
ところで、「就労資格証明書」についてご存知の方はあまり多くないのではないでしょうか。まず、「就労資格証明書」の概要および意義等についてご説明します。
就労資格証明書の概要および意義
日本で働いている外国人の方で、事情の変化等により転職する方がいらっしゃいます。
ところが、転職後、雇った外国人から「就労ビザ」の更新ができなかったと相談を受ける場合があります。「就労ビザ」の更新ができないと、会社はその外国人を雇い続けることはできませんし、外国人も日本に在留することが難しくなります。これでは、会社も大きな損失です。なぜそのようなことが起こるのでしょう。
※「就労ビザ」とは、外国人が日本で働くために必要なビザです。具体的には「技術・人文知識・国際業務ビザ」、「技能ビザ」、「企業内転勤ビザ」等を総称して「就労ビザ」としています。
■外国人の転職
日本人の場合、転職は自由ですし特段の制限もありませんが、外国人の場合はどうでしょう?
実は外国人の転職は入管法の制限があるのです。外国人が日本で働くために取得する「就労ビザ」は、外国人の学歴や経験が日本で就職する会社の職種内容と適合するかどうかを審査しますので、不適合の場合ビザは認められません。
これは、ビザの変更や更新の場合も同様です。
特に転職した場合は、現在持っている「就労ビザ」で認められる職務内容と、転職後の職務内容の適合性が審査されます。つまり、転職後の職務内容が、現在持っている「就労ビザ」で認められる活動範囲”内”であることが必要になるのです。しかし、転職後の職務内容が、現在持っている「就労ビザ」で認められる活動範囲”外”である場合、ビザの更新は認められなくなります。具体例を見てみましょう。
■外国人の転職事例1
転職前に「技術・人文知識・国際業務ビザ」を取得し通訳として働いていた外国人が、転職後、飲食店で働く場合を考えてみます。
就職先が飲食店でも、外国人が人事、総務や経理、マーケティングなどの業務で雇われたのであれば、ビザは許可される可能性はあります。何店も出店している大きな飲食店の本部であれば、人事、総務や経理の仕事はあるかも知れませんが、普通の飲食店で部門が分かれているところは少ないのではないでしょうか。
そうなると、外国人がホールやレジなどの業務を行うことが想定されますので、ビザの更新が認められない可能性が高くなります。
なぜ、ビザの更新が認められないかといいますと、「技術・人文知識・国際業務ビザ」は、営業部門や事務部門、企画部門等のホワイトカラー系の職務を行うことが予定されているため、飲食店のホールやレジのような単純労働が認められないからです。同様に、外国人がコンビニの店員や、工場のライン作業の仕事に転職した場合も、ビザの更新は不許可になる可能性が高くなります。
■外国人の転職事例2
「技術・人文知識・国際業務ビザ」を持っている外国人が前職で通訳の仕事をしていた場合、転職後も通訳の仕事であれば問題ないのかといいますと、そう簡単ではありません。
なぜなら、ビザの更新の際、外国人を雇う会社の経営状況や外国人の待遇等を含め審査されるからです。
例えば、転職前に大企業で働いていた外国人が中小企業等に転職する場合、大企業と中小企業ではビザの審査基準が違ってきますので、書類の追加提出を求められることがありますし、場合によっては不許可になることもあります。
■「就労ビザ」の更新が認められない場合
「就労ビザ」の更新が認められないとすると、どうなるのでしょうか。
会社側からすると労力をかけ、あるいはお金をかけて採用した外国人の「就労ビザ」が許可されないとなると、大きな損失となります。
また、外国人にとってもせっかく見つけた就職先で働けないとなると、生活基盤を失いますし、今後日本に在留できないことも考えられますので、大きな影響があるのです。
転職した外国人が転職先で問題なく働けることを証明するものがあれば、このような問題は防げます。そこで定められたのが「就労資格証明書」なのです。
就労資格証明書交付申請のメリット
「就労資格証明書」とは、一言でいいますと外国人が転職する場合のお墨付きです。
外国人も日本人と同様、労働市場の流動化が進んでいます。そのため、転職時に「就労資格証明書」を取得することは重要性を増しています。なぜなら、「就労資格証明書」は転職してきた優秀な外国人を安心して雇うことができるツールだからです。
「就労資格証明書」を取得するメリットは大きく二つあります。
■就労資格証明書取得のメリット1
「就労資格証明書」の交付を申請するメリットの一つは、外国人が胸を張って働けるということです。
「就労資格証明書」が交付されれば、外国人が転職先で働くことを入国管理局からお墨付きが与えられたということになりますので胸を張って働けますし、ビザの更新もスムーズに行われることになります。
なお、「就労資格証明書」が交付されていれば必ずビザの更新は許可されるかといいますと、必ずしもそうではありません。ビザの取得やビザの更新後に、外国人の生活面等でビザの更新が認められないような事実があれば、ビザの更新は認められない可能性が高くなります。ご注意ください。
■就労資格証明書取得のメリット2
「就労資格証明書」のメリットの二つ目は外国人の「不法就労」を防止することにより、会社が安心して外国人を雇うことができるということです。
「不法就労」の外国人を雇うと、会社は「不法就労助長罪」として罰せられます。
この「不法就労助長罪」は3年以下の懲役または300万円以下の罰金となっていますので、軽い罪ではありません。また、外国人が「不法就労」であることを会社が知らなかったとして罰は免れません。
そのため、会社は外国人を雇う際、その外国人が会社で雇うことができるのかしっかり調べる必要があります。当然在留カードやパスポートで確認するのですが、「就労ビザ」を持っている外国人が、具体的にどのような職種で雇うことができるのかを理解している方はあまり多くないと思われます。
転職する外国人を安易に雇ってしまうと、場合によっては外国人に「不法就労」をさせたとして、「不法就労助長罪」を問われる可能性があります。
この場合、外国人も会社も故意に行ったというよりも、外国人は知識不足で安易にビザで認められない職種に転職し、また、会社も知識不足で安易にそのような外国人を採用し、結果的に犯罪行為になってしまったケースが多いと思われます。
このようなケースを防止するため、「就労資格証明書」の交付を申請し、転職後の外国人を雇っても問題ないことをで証明してもらうのです。「就労資格証明書」が交付されれば、会社側も安心して転職後の外国人を雇うことができます。
現在、転職する外国人に「就労資格証明書」の提出を義務付けている会社が徐々に増えています。会社も自身の身を守るために積極的に「就労資格証明書」の活用を検討すべきではないでしょうか。
ただし、この点はしっかりと押さえておかなければならないのですが、「就労資格証明書」の提出がないからといって、雇用時に外国人に対し不利益な取り扱いはできません。お気を付けください。
ビザの更新直前に転職した場合
ビザには在留期限が定められています。外国人が在留期限後も日本に在留するためには、在留期限までにビザを更新しなければなりません。
ところで、ビザの在留期限の直前に転職した場合はどうなるのでしょう。
転職後の会社で働けるかどうかを「就労資格証明書」で証明して、すぐにビザの更新を行うとなると外国人も大変です。
転職後の会社で働けるかどうかはビザの更新手続きの中で審査されます。そのため、在留期限間近で「就労資格証明書」の交付申請をする意味はありません。
そこで、ビザの在留期限間近な方は、「就労資格証明書」の交付申請を行わず、ビザの更新手続きをすることになります。ビザの更新申請をするか「就労資格証明書」の交付申請をするかは、在留期間の残月数が概ね6か月以上あるかどうかと考えます。在留期限の残月数が6か月もない場合はビザの更新申請をする方がいいでしょう。
就労資格証明書の交付対象
「就労資格証明書」の交付対象となる外国人は次のよう方です。
〇「就労ビザ」をお持ちの方 〇就労できないビザをお持ちの方で、資格外活動の許可を受けている方(「文化活動ビザ」、「短期滞在ビザ」、「留学ビザ」、「研修ビザ」、「家族滞在ビザ」) 〇就労制限のないビザをお持ちの方(「永住ビザ」、「日本人の配偶者等ビザ」、「永住者の配偶者等ビザ」、「定住者ビザ」) |
就労資格証明書交付申請時の必要書類
「就労資格証明書」の交付を申請する場合に必要な書類ですが、入国管理局のホームページに必要書類が掲載されています。
ただし、掲載されている必要書類だけでは許可されないことも考えられます。次のような書類を任意に提出する方がいいでしょう。
〇源泉徴収票(転職前の会社が発行したもの) 〇退職証明書(転職前の会社が発行したもの) 〇転職後の会社等の概要を明らかにする資料 ・法人登記簿謄本(発行後3ヶ月以内) ・直近の決算書の写し(新設会社の場合は、今後1年間の事業計画書) ・会社等の案内書(取扱い商品あるいは提供するサービスの概要を説明するもの) 〇次のいずれかで、転職後の活動の内容、期間、地位及び報酬の記載ある文書 ・雇用契約書の写し ・辞令の写し ・採用通知書の写し 〇転職理由書 |